ベッドから万が一ずり落ちてしまったとき、転落してしまったとき。その衝撃で骨折してしまうと、そこから寝たきりにつながることもあります。
「転ばないようにする」だけでは防ぎきれない場面に備えて考えられたのが、衝撃吸収マットです。
今回は、衝撃吸収マットとは何か、どんな人にあると良いのか、あるとないとでどのくらい差があるのかを、データも交えて福祉用具専門相談員の目線でまとめました。
この記事でわかること
衝撃吸収マットとは
何のための道具か、どんなタイプがあるかがわかります
あると良い人
どんな方にとって備えになるかがわかります
あるとないとで、どれくらい差があるか
実験・研究のデータと、その限界がわかります
おすすめの衝撃吸収マット3選
比較表と詳しい説明で選べます
🌟 まず検討したい2点
一番のオススメ:ころやわマットⅢ
ふだんは硬くて歩ける、転んだときだけ凹む薄型マット。日本転倒予防学会の推奨品に認定されています。
手軽に始めるなら:テラモト 安心クッションマット
1万円台から選べる、厚さ15mmのクッションマット。24時間敷きっぱなしにしやすいタイプです。
衝撃吸収マットとは
衝撃吸収マットは、ベッドの脇の床に敷いて、転落・転倒したときの衝撃をやわらげるマットです。
目的は、骨折(特に太ももの付け根の大腿骨近位部)や、頭のけがを軽くすることです。転ぶのを防ぐ道具ではなく、転んだときのダメージを減らす道具です。
健康長寿ネットでも、ベッドから転落したり、ベッド脇で転倒しやすい方に使うもので、転倒・転落に伴う骨折予防としては最も効果があると考えられる、と紹介されています。すぐに誰かがかけつけられる場合は、離床センサーを使用するケースもあります。
マットには2つのタイプがあります
①厚みのあるクッション型
厚さ数cmのスポンジ・フォームでしっかり衝撃を受けます。反面、歩くと沈んで不安定になりやすいので、ベッドから降りるときの足元には向きません。寝ている間だけ敷く使い方が中心です。
②薄型の歩ける型
1〜2cm前後と薄く、ふだんは硬くて歩ける作りです。端はスロープ状で、敷きっぱなしにしやすいのが特長です。
ヒッププロテクターとの違い
転倒骨折の予防具には、ヒッププロテクター(股関節を守るパッド)や頭部保護帽もあります。これらは身につけるもので、頻繁に転ぶ方や、ある程度歩ける方に向きます。
衝撃吸収マットは床に敷くもので、ベッドからの転落や、ベッド脇での転倒に備えます。身につける負担がないのが利点です。

衝撃吸収マットがあると良い人
高齢者の転倒は多く、65歳以上の約3分の1が、1年に1回以上転倒を経験するとされています。大腿骨頸部骨折の約90%は、転倒が原因と報告されています。
そのなかでも、次のような方は、備えがあると安心です。
ベッドから落ちたことがある・落ちそうな方
寝返りが大きい、ベッド端で寝る、といった方です。
夜間に起き上がって動いてしまう方
認知症やせん妄で、夜に急に立ち上がることがある場合です。
骨粗しょう症のある方・過去に骨折した方
転倒したときに、骨折しやすい状態です。
退院直後で、動き始めの方
自宅の環境に慣れておらず、ふらつきやすい時期です。
見守りが難しい家庭・夜間
付きっきりで見守れない時間帯の、万が一への備えになります。
車いすで移動する方や、歩行でわずかな段差でもつまずく危険がある方には、マットの端が段差になり、むしろ危険になる可能性があります。
厚みのあるマットを床に敷きっぱなしにするのは、特に注意が必要です。
導入前に、歩き方・足の上がり方・移動手段を見て、本当に合うかの適性を判断してください。迷うときは、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員、理学療法士に相談を。
あるとないとで、どれくらい差があるのか
データはメーカーの試験と、公的な系統的レビューがあります。どちらも見ておきましょう。
床材による差(コンピューターシミュレーション)
東京科学大学とマジックシールズの共同研究で、骨折した高齢女性の大腿骨CTから3Dモデルを作り、後ろに転んだときの衝撃を再現しました。結果は次の通りです。
| 床の種類 | 結果 |
|---|---|
| ビニルシート(2mm厚) | 大腿骨近位部の骨の形が壊れる結果 |
| スポンジマット(40mm厚) | 骨折予防効果あり。ただし、歩くときに不安定 |
| ころやわ(22mm厚) | 骨の形を保てる。スポンジマットと同等の予防効果で、歩行時は安定 |
出典:Oh Y, et al. Biocybernetics and Biomedical Engineering 2026(マジックシールズ発表)
衝撃の大きさ(実験)
ころやわは、立った状態から転倒したときに大腿骨にかかる荷重を、一般的なフローリングの約半分に抑えると発表されています(名古屋大学の落錘式衝撃試験)。骨粗しょう症の大腿骨骨折の目安とされる荷重(221kgf)を下回るとされています。
2023年の発表では、転倒時の衝撃を、ヘルメットをかぶったときと同程度まで軽くできる(G値37)としています。
公的な研究では?
イギリスなどの研究者による系統的レビュー(SAFEST、2022年)では、衝撃吸収床は、病院・介護施設でけがを減らす可能性がある一方、転倒そのものは増やさない、とされました。ただし、エビデンスの質は「とても低い」と評価されています。
また、骨折や頭のけがへの効果は、まだ証拠が足りないとされ、スタッフがベッドや台車を動かしにくくなる、という報告もあります。
実験やシミュレーションでは、衝撃が大きく減ることが示されています。ただし、マットがあれば骨折しない、という意味ではありません。ころやわの公式FAQでも、すべての骨折を防ぐことを保証する製品ではない、とされています。
おすすめの衝撃吸収マット3選
| 商品 | 厚さ・サイズ | 価格目安 | 特長 | 向く場面 |
|---|---|---|---|---|
| ころやわマットⅢ(マジックシールズ) | 薄型 ベッドサイド用ワンサイズ | 約8万円 (公式・税込) | ふだんは歩ける硬さ。転倒時だけ凹む | 歩ける方・車いすの方にも。敷きっぱなしにしたい |
| 安心クッションマット(テラモト) | 厚さ15mm 60×150cmなど | 約1.3〜2万円 | 手頃。24時間常設しやすい | まず手軽に始めたい。寝室・トイレ前など |
| 衝撃吸収マット(ピジョンタヒラ) | 厚さ約4cm・二層 65×180cm前後 | 約3.1〜3.6万円 | しっかり厚く衝撃を受ける。持ち手付き | 寝ている間の転落に。歩行の少ない方 |
※価格はAmazon・楽天・メーカー公式の表示の目安(2026年10月時点)です。
①ころやわマットⅢ/マジックシールズ
ころやわは、ふだんは硬くて歩ける、転んだときだけ凹むという、これまでにない特長のマットです。内部の特殊な構造(メカニカルメタマテリアル)で、杖や車いす、歩行器でも大きく沈みません。
端は、段差が1mmほどのスロープで、つまずきにくい設計です。バリアフリーの基準より緩やかな傾斜で、車いすでの移動もしやすいとされています。ポータブルトイレや置き型手すりも、平らな面に置けます。
日本転倒予防学会の推奨品に認定されていて、全国の1,600以上の施設に導入されています。2026年6月には後継の「ころやわマットⅣ」(約9.9万円)も発売されました。
向く人:ベッドからトイレまで歩く方、車いすや歩行器を使う方、マットを出し入れせず敷きっぱなしにしたい方。
専門員の一言:薄型でも、端の段差ゼロではありません。すり足の方は、導入前に必ず足元の動きを確認します。メーカーの無償デモ品で試せます。
注意:価格が高めで、介護保険の福祉用具貸与の対象外です。浴室での使用は推奨されていません。

②安心クッションマット/テラモト
テラモトの「安心クッションマット」は、ベッド周りやトイレ前などに敷く、厚さ15mmのクッションマットです。60×150cmなど複数のサイズがあり、1万円台から選べます。
販売店の説明では、24時間敷きっぱなしにできて出し入れ不要、滑り止め加工付きで、めくれにくく車いすも乗り上げやすいとされています。
向く人:まず手頃に始めたい方、トイレ前など、短い範囲だけ備えたい方。
専門員の一言:厚いマットほどは衝撃を吸収しません。「転落時のけがを少し減らす」位置づけで考えます。端がめくれないか、定期的に確認してください。
③衝撃吸収マット/ピジョンタヒラ
ピジョンタヒラの衝撃吸収マットは、ポリエチレンフォームとウレタンフォームの二層構造で衝撃を吸収する、厚さ約4cmのマットです。
カバーは、抗菌・難燃・防水・撥水加工。裏面は滑り止め付きで、ずれにくい作りです。縁は、見えやすいオレンジ色で、持ち手があり、女性でも扱いやすい軽さとされています。
向く人:夜間のベッドからの転落が心配で、寝ている間はしっかり衝撃を受けたい方。
専門員の一言:厚さ約4cmは、歩く方にはつまずきやすい段差です。ベッドから降りて歩く方には不向きで、寝ている間だけ敷き、起床時に外す使い方が基本です。
選ぶときのポイント
①敷く範囲
ベッドから降りる側を中心に。足元だけでなく、頭の側も考えます。
②ずれにくさ
滑り止めの有無と、端がめくれないかを確認します。
③歩く方か、寝ている時間が長い方か
歩く方は薄型、寝ている時間が長い方は厚めのタイプが目安です。
④併用
離床センサーやベッドの高さ調整(低くする)と組み合わせると、さらに安心です。
夜間の転倒対策は、こちらの記事もどうぞ。
夜、トイレに間に合わない高齢者の対策|介護ベッドの柵に手が挟まる|ベッド柵カバーの選び方
まとめ
衝撃吸収マットは、ベッド脇の床に敷いて、転落・転倒したときの衝撃をやわらげるマットです。骨折や頭のけがを軽くするための備えです。
実験やシミュレーションでは衝撃が大きく減ることが示されていますが、骨折を確実に防ぐものではありません。
歩く方には薄型のころやわ、手頃に始めるならテラモト、寝ている間の転落にはピジョンタヒラが目安です。
段差でつまずく方には、むしろ危険になることがあります。導入前に、必ず適性を確認しましょう。



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