ベッドの上で身体をずらしたい。車いすでずり落ちた身体を座り直させたい。介助する側がいちばん腰を痛めやすいのが、こうした「動けない人の移動」の場面です。
そこで活躍するのが、移乗シート(スライディングシート)と移乗グローブ(スライディンググローブ)です。摩擦をなくすだけで、驚くほど軽い力で動かせます。
今回は、それぞれの特徴・使う人・使う場面と、私が現場で使っているおすすめ商品を、介護保険のレンタル対象かどうかも含めてまとめました。
この記事でわかること
移乗シートと移乗グローブとは
何をするための道具かがわかります
シートとグローブの違い
特徴・使う人・使う場面で使い分けがわかります
おすすめの移乗シート3選
現場で一番使っている移座えもんシートほか
おすすめの移乗グローブ3選
それぞれの違いと選び方がわかります
敷きっぱなしの移乗シートと注意点
ゴミ袋で代用できない理由、介護保険のレンタルもまとめました
🌟 まず検討したい1点
モリトー 移座えもんシート BLACK(Mサイズ)
私が現場でいちばん使っているスライディングシート。摩擦のなさはピカイチで、弱い力で移乗できます。介護保険のレンタル対象です。
移乗シート・移乗グローブとは?
どちらも、ベッドの上や車いすの上など、自分で動けない人の身体を移動するとき、摩擦をなくして動きやすくするための道具です。
移乗シート(スライディングシート):身体の下に敷いて使います。
移乗グローブ(スライディンググローブ):介助者の腕にはめて、身体の下に差し込んで使います。
人を持ち上げたり、引きずったりするのではなく、滑らせて動かすのが基本です。厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」でも、介護・看護の人を抱え上げる作業では、福祉用具を使った省力化で腰の負担を減らすことが求められています。
また、シートの上で滑らせて動かすことは、利用者さんの皮膚にかかる「ずれ」を減らすことにもつながります。大きな力で引きずると、シーツとの摩擦で皮膚がずれる原因になるからです。
シートとグローブの違い・使い分け
どちらがよいかは、場面と相手によって変わります。それぞれ、良いところと悪いところがあります。
| 移乗シート | 移乗グローブ | |
|---|---|---|
| 使い方 | 身体の下に敷く | 腕にはめて、身体の下に差し込む |
| セッティング | やや大変(身体の下に敷き込む) | 簡単(腕にはめて差し込むだけ) |
| 移動のしかた | 一気に移動できる | 一気には動かせない。何回かに分けて動かす |
| 向いている場面 | ベッド上で身体をしっかり移動したいとき | 少しずらしたい、背抜き、すぐ使いたいとき |
| 介護保険 | レンタル対象の商品がある | レンタル対象外 |
私の使い分け:しっかり動かしたいときはシート、手早く少しだけ動かしたいときはグローブです。自分に合った方法や、場面に合わせて使い分けるとよいでしょう。
どんな人・どんな場面で使う?
| 場面 | 使う人 |
|---|---|
| ベッド上で、ずり下がった身体を頭側へ戻す | 寝たきりの人、ベッドで過ごす時間が長い人 |
| ベッド上で横に動かす、寝返り・体位変換 | 自分で動けない人、麻痺や筋力低下のある人 |
| 背上げ後の「背抜き」(背中のつっぱりを取る) | 座位や背上げで過ごす時間が長い人 |
| 車いす上でのずり落ちの修正、座り直し | 車いすでの姿勢が崩れやすい人 |
※介助者の腰痛予防にも役立ちます。腰に不安のある方、1人で介助することが多いご家族ほど、導入をおすすめします。
おすすめの移乗シート3選
| 商品 | サイズ(cm) | 価格目安 | 介護保険 | 特徴 | 購入 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① モリトー 移座えもんシート BLACK | S 45×60/M 75×75/ML 75×120/L 145×90 | M 3,300円〜(Amazon 約2,500円〜) | レンタル対象 | 滑りが最も良く、弱い力で移乗できる。筒状で、ローリングして使う | |
| ② ウィズ 介助らくらくシート | S 70×73/M 120×73 | Amazon 約2,200円〜(レンタル目安 月500円) | レンタルあり | 筒型でナイロン製。洗濯可能。ベッド上の移動に | |
| ③ LOSCHEN スライドシート | 72×72ほか | Amazon 約1,700円〜 | 対象外 | 筒状で安価。とりあえず試したい人向け。滑りはやや劣る |
※価格は2026年10月時点の目安です。メーカー価格は税込。介護保険のレンタル可否は、ケアマネジャー・福祉用具事業所にご確認ください。
① モリトー 移座えもんシート BLACK(レンタル対象)
私が現場でいちばん使っているシートです。筒状に縫製されていて、キャタピラーのようにローリングしながら動くので、少しの力でスライドします。ナイロンタフタに特殊コーティングを施した素材で、耐荷重は100kgです。
特徴:摩擦のなさはピカイチ。介助者の腰への負担がもっとも軽く、弱い力で移乗できます。ただし、滑りすぎて怖いと感じる方も、慣れていないうちはたまにいます。慣れていない方は、安全に十分注意して使ってください。
サイズの選び方:S(45×60cm)、M(75×75cm)、ML(75×120cm)、L(145×90cm)があります。Lなら全身を覆えますが、扱いやすいのはMサイズです。足が立てる人、踏ん張れる人は、Mサイズで十分です。
注意:メーカーも、特に柔らかいマットレスでの使用は移動の負担が大きくなることがあると案内しています。その場合は、移座えもんパッドやボードの併用がすすめられています。
② ウィズ 介助らくらくシート
耐久性に優れたナイロン素材の、洗濯できる筒型スライディングシートです。S(幅70×長さ73cm)とM(幅120×長さ73cm)があり、色は青。ベッド上の位置修正や移乗のときに、頭・背中・お尻の下に敷き込んで使います。介護保険のレンタル商品としても扱われています(ダスキンヘルスレントの参考価格で、月500円)。
移座えもんシート BLACK との違い:どちらも筒型のナイロン製です。サイズ展開は、移座えもんがS・M・ML・Lの4種類で選べるのに対し、ウィズはSとMの2種類でシンプルです。洗濯は、ウィズが弱・40℃以下(乾燥機は不可)、移座えもんは漂白剤・柔軟剤・乾燥機・アイロンを避ける必要があります。ウィズはレンタル商品としても扱われており、月額の負担を抑えやすいのも特徴です。
③ LOSCHEN スライドシート(介護保険レンタル対象外)
とりあえず何でもいいから試してみたい、値段は安く抑えたいという方にはこちらです。筒状のスライドシートで、72×72cmが約1,700円。Amazonでは評価4.4(384件)です。ほかに110×70cm、130×70cmなどのサイズもあります。
ただし、滑りやすさは移座えもんより少し劣ります。介護保険のレンタル対象外なので、自費で購入することになります。まずは使い方を試す入り口として選ぶのがおすすめです。
おすすめの移乗グローブ3選(介護保険レンタル対象外)
※価格は目安です。グローブは介護保険のレンタル対象外で、自費購入になります。
① モリトー 移座えもんグローブ
グローブも、このメーカーさんがお気に入りです。手袋状に縫製されていて、身体の下に差し込むことで、ベッド上の左右の移動が簡単にできます。素材はナイロンです。
特徴:親指をひっかけて置ける穴があるので、移乗グローブを利用者さんとマットレスの間に入れたときに、腕だけが抜けてしまうのを防げます。差し込んだあとの動作が安定します。
② ケープ 介助グローブ
床ずれ防止用具の専門メーカー、ケープのグローブです。幅17×長さ53cmのフリーサイズで、ナイロン100%、日本製。家庭用洗濯機(弱・30℃)で洗えます。
移座えもんグローブとの違い:装着後に指を開いても落ちない幅の、スリムな筒型で、裏返しやすいつくりです。臀部など重い部分にも手を差し込みやすい、とされています。また、使い捨てタイプ(50枚入)もあるので、感染対策が気になる場面にも使えます。
③ モルテン ポジショニング・グローブ
モルテンのポジショニングケア専用グローブです。幅22×長さ55cmと、上の2つより大きめで、重さは約35g。素材はナイロンです。
上の2点との違い:内側は腕から外れないよう滑りにくく、外側は差し込みやすいよう滑りやすい素材を使っています。身体を動かすというより、ポジショニング後に身体にかかる圧やずれを取り除く(背抜き・圧抜き)ことに力を入れた商品です。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる消毒にも対応しています。
介護保険でレンタルできる?
移乗シートは、介護保険でレンタルできる商品があります。国の通知では、スライディングボード・スライディングマットは「特殊寝台付属品」として、「滑らせて移乗・位置交換するための補助として用いられるもので、滑りやすい素材または構造のもの」とされています。
レンタルの条件と注意
体位変換器になります。要支援1・2、要介護1の方は、原則として特殊寝台と特殊寝台付属品が対象外です(例外あり)。
移乗グローブは、レンタルの対象外です。購入する場合は自費になります。
レンタルできるかどうかは、商品や利用者の状態によって変わります。ケアマネジャーや、福祉用具専門相談員にご相談ください。
専門員の一言:ゴミ袋・ビニールシートでは代用できません
「ビニールシート(ゴミ袋)で代用できる」と言われることがありますが、代用はできません。雲泥の差があります。何もないよりは、ビニールシートを下に敷いたほうがまし、という程度です。これは、用意が難しい人への苦肉の策です。
腰痛の危険性がある人は、特にお金をかけてほしいところです。
また、シートは滑りやすいので、使ったあとは必ず抜いてください。シートを敷いたまま目を離し、利用者がシートごとベッドから落ちそうになった事例が、テクノエイド協会のヒヤリハット事例で報告されています。
まとめ
まとめ
移乗シートとグローブは、摩擦をなくして動かす道具
腰への負担を減らし、弱い力で移動できます
シートは一気に、グローブは手早く
セッティングの手間と、動かせる量で使い分けましょう
まず試すなら、移座えもん(シート・グローブ)
私が現場で一番使っています。安く試したいならLOSCHEN
敷きっぱなしタイプや、介護保険のレンタルも選べる
ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談を
道具は、使う人と場面に合っていてこそ力を発揮します。迷ったら、遠慮なく福祉用具専門相談員にご相談ください。
参考情報
- 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(老企第34号)
- 厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」
- テクノエイド協会 福祉用具ヒヤリ・ハット情報(事例210)
- 各メーカー公式サイト(モリトー、ケープ、モルテン、パシフィックサプライ、ホームケア渡部建築)/ダスキンヘルスレント
- Amazon・楽天市場の各販売ページ(価格は2026年10月時点)


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