高齢者になると、夜眠れなくなる方は多くいます。
元々、日本人は睡眠に悩みを抱えている方が多く、5割の人は問題を抱えており
20人に1人が睡眠剤を飲んでいます。
また、その割合は高齢者になると増え、3人に1人は睡眠剤を飲んでいる状態です。
では、なぜ高齢者にになると夜眠れなくなるのでしょうか?
夜、眠れない原因
活動量の低下
高齢者になると、身体機能が低下したり、退職などにより、日中の活動量が以前より減少します。これにより、夜に十分な睡眠欲求が生まれにくくなります。
生理的変化
65歳を過ぎると、深い睡眠の割合が減少し、浅い睡眠の割合が増加します。これにより、夜間途中で目が覚めることが増え、睡眠時間が短くなり、長時間寝られなくなります。
高齢者になって、夜中何度も起きてしまうことは、仕方のないことなんですね
メラトニン分泌量の減少
加齢とともに睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が減少します。これにより体内時計が乱れ、質の良い睡眠が取りにくくなります。
生活習慣病
高血圧や糖尿病などの生活習慣病が不眠を引き起こす可能性があります。例えば、糖尿病による頻尿や神経障害が睡眠を妨げることがあります。
高血圧の方で、昼間かなりの頻尿で、しょっちゅうトイレに行くが毎回ほとんど出ず、夜間大量に出るという方が結構いらっしゃいます。
認知症
認知症も不眠の原因となることがあります。
ストレス
退職して環境や1日のルーティーンが大きく変わってしまったこと、配偶者との死別、独居などによる心理的ストレスが不眠を引き起こすことがあります。
睡眠への不安や焦り
高齢者は眠れないことへの不安や焦りが強く、これが睡眠を妨げる悪循環を生み出すことがあります。
複数の原因が重なり合うことで、高齢者の方の夜眠れない問題を引き起こしています。生活習慣を適切なものに改善したり、必要に応じて医療に頼ることにより、睡眠の質を向上させることができます。
不眠の改善方法
夜、眠れない状態を改善する方法として、一般に挙げられるものをご紹介します。
日中の活動量を増やす
日光を浴びながら外出し、適度な運動や人との交流を行うことで、昼夜のリズムを整えます。軽い体操や散歩などが効果的です。
夜、眠れない人ほどデイサービスやコミュニティセンターでのイベント、地域の集まりなどに参加してもらいたいです。
睡眠環境の整備
快適な温度と湿度を保つ
温度…夏: 26~28℃/冬: 16~23℃(18℃程度が理想的)、湿度…年間を通して: 40~60%
温湿度計を部屋に置くと良いでしょう。
部屋を適度に暗くする
睡眠に適した部屋の明るさは、50ルクス以下が推奨されています。これは、月明かりやごく小さな豆電球程度の明るさに相当します。
心理的安心感
人間は進化の過程で、完全な暗闇よりも微かな光のある環境で眠ることに適応してきました。月明かりや焚き火の明かりのような薄暗い環境の方が、心理的な安心感を得やすいのです。
メラトニン分泌への影響
適度な暗さ(0.3ルクス程度)は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げません。これは月明かりがカーテン越しに入る程度の明るさです。
睡眠の質への影響
人間環境・睡眠科学研究所の研究によると、30ルクス未満の明るさであれば、レム睡眠や深いノンレム睡眠に悪影響を与えないとされています。
安全性と利便性
微かな明かりがあることで、夜中にトイレに行くなどの際の安全性が確保されます。
ただし、個人差があるため、自分にとって最適な明るさを見つけることが重要です。結論として、完全な暗闇よりも、適度な薄明かりのある環境の方が、多くの人にとって快適な睡眠環境となる可能性が高いといえます。
真っ暗の方が良いと思われがちですが、それは好みの問題だと思います。睡眠に適した明るさは真っ暗じゃなくても大丈夫です!
就寝前は特に、テレビやスマートフォンなどから発せられるブルーライトを避けることが重要です。ブルーライトは、メラトニンの分泌を強く抑制し、覚醒効果があります。
寝室からトイレまでの道のりには、足元灯を設置することをオススメします。
電気付けたら目が覚めちゃうでしょ?だから、真っ暗のままトイレに行っているのよ…
そう言われる方は多いのですが、足元灯くらいの明かりでは覚醒はしませんし、足元が暗くては転倒のリスクが高まります。人感センサー付きの足元灯を付けることをオススメします。
私は、小さいタイプより、細長いタイプの方がオススメです!
小さいタイプは、コンセントに差し込むだけなので、設置が簡単ですが、その周辺を明るく照らすのみで、廊下や部屋の足元全体を照らすわけではありません。広範囲を照らしてくれる方がオススメです。
就寝時間の調整
眠気がないのに早い時刻から床に入るのは避けましょう。自然な眠気を感じてから就寝するのが理想的です。
眠くなるまでテレビを見る方は多いですが、テレビの光で覚醒してしまうので、どうしても寝る直線までテレビを見ていたい方は、気休め程度ですが、ブルーライトカット付の眼鏡をする、テレビの明るさを下げるなどして対策しましょう。
食事と飲み物の管理
カフェインとアルコールの制限
夕方以降のカフェイン摂取を控え、アルコールの過度な摂取も避けましょう
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク、栄養ドリンクは15時以降の摂取を控えましょう。
水分摂取の調整
夕刻以降の過剰な水分摂取を避け、夜間のトイレ覚醒を減らします
適切な睡眠時間の理解
65歳以上の適切な睡眠時間は約6時間です。必要以上に長時間の睡眠を求めすぎないことが大切です。
「0時まで起きてて、朝5時に起きてしまう…」と相談があったことがあります。若い頃とは身体が変わってきているので、十分眠れています。心配しすぎないことも大事です。
昼寝の管理
昼寝は15時までに20〜30分程度に抑えましょう。
ただ、浮腫みがある人は夜間トイレに起きてしまうことが多いので、昼間に寝なくても1時間くらい横になると足に溜まった水を心臓の方に戻すことができます。
専門家への相談
症状が改善しない場合は、専門医に相談することをおすすめします。
病院の専門順位は、睡眠専門外来→精神科・心療内科→内科(かかりつけ医)です。
睡眠剤を処方してもらうことで、夜間眠れるようになります。
これらの方法を組み合わせて実践することで、高齢者の方が、夜眠れるようになる可能性が高まります。個人の状況に合わせて、無理のない範囲で取り組んでみてください。
現場であった改善方法
次に、私が実際に現場であった不眠による改善方法をご紹介します。
トイレに起きる
圧倒的に多かったのが、夜間トイレに起きることです。
・カフェインをとらないようにする
カフェインの摂取と、水を飲む量を徹底してください。常温の水、白湯、麦茶を日常的に飲むようにしてください。
・膀胱の容量、括約筋を鍛える
頻繁にトイレに行き過ぎて膀胱の容量が小さくなっている方、括約筋が衰えて、トイレに行く前に漏れてしまう方も多くいます。
膀胱の容量を増やすには、トイレに行きたくなったら、まずは1分我慢してください。次に5分、10分と少しずつ長くしていきます。30分我慢できるようになったら理想でしょう。それ以上は膀胱炎になる可能性もあるので、やめてください。
括約筋を鍛える方法は、こちらのブログを参考にしてください。
・浮腫みを改善する
浮腫みがある方は、夜に横になることで足に溜まった水が心臓の方に戻ってきます。そうすると、夜間トイレに行きたくなります。そのため、寝る前までに浮腫みを解消できたら、あらかじめ浮腫まないように予防ができたら、夜間トイレに行くことを防ぐことができます。
浮腫みに対する対策はこちらを参考にしてください。
これはただの都市伝説なのですが、とある方が毎日リポビタンDを飲むと浮腫まないようになったと仰っていました。
・睡眠剤が怖い、自分に合ってないから飲まない
これもよくあるのですが、睡眠剤を処方してもらったものの、効かない、飲んだら昼まで眠かった、朝ふらふらして起きれなかった、夜間起きれず漏らしてしまったなど、副作用による生活に支障が起こり、怖くなって飲まなくなった、効果が見られず、意味が無いので飲まなくなった方が多くいます。
日常生活に支障がないくらいの副作用(めまい、便秘、下痢など)であれば、数日様子を見てほしいのですが、30日分処方されても1ヶ月待たずに、上記のようなこのがあれば、すぐ先生に相談して薬を変えてもらってください。
睡眠剤は種類もたくさんあり、身体に合う合わないが大きいので、すぐに変えてもらうことが大事です。
外来での薬物療法が難しい場合、入院して合う薬を見つけてもらい、現在快適に寝ることができている方もいます。
・昼間頭か身体を動かす
昼間、お風呂に入っていない(お風呂に入ることはすごいエネルギーを使います)、1日中座ってテレビを見ている、うとうとしている、寝ていないが布団の中に入っている…。
エネルギーを消費しないと、やはり眠りにくいです。身体が動きにくい方は頭を使ってください。塗り絵、計算、編み物、絵を描く、洗濯物をたたむなどの軽作業、何かしらして頭や身体を動かしてください。
ユニバーサルデザインの筆記用具も多く販売されています。指にはめ込むだけの指筆や、押して切るカスタ、デイサービスでやっているレクリエーションを家でもできるクラフトキットもあります。
カラオケ好きな人には、UTAETを使えば、近所迷惑にならずに大声で気持ちよく歌えます。
このようなものを活用して、日中は活動的に過ごせたらと思います。
夜、眠れないのは不安ですよね。時間も過ぎるのが遅く、このまま眠れないんじゃないかとか、時間があると他の心配しなくていいことまで考えてしまいます。
私にも、夜眠れないという相談は多くきます。
皆さんが1日でも早く、眠れますように…。
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